2018年6月17日日曜日

第1回全日本フラメンココンクール予選

6月16日、麹町のインスティトゥト・セルバンテスでの全日本フラメンココンクール予選。
先週のセビジャーナスフェスティバルに引き続き、審査員を務めさせていただきました。
20人の出場者の皆さんお疲れ様でした。

5分という制限時間の中で、皆さんそれぞれのフラメンコを見せてくれました。
5分は短い、とお思いかもしれませんか、それぞれのレベルを知るには十分な時間ではないでしょうか。コンパス、姿勢、回転、サパテアード、ブラセオ、体の使い方、表情、振付の構成、伴奏との付き合い方/対話、衣装や髪型、化粧など装い全般…いろんな要素で踊りは出来上がっています。舞台にただ立っただけでも見えてくるもののあります。

今回のコンクールでは年齢制限がなく、多くの生徒さんを持つベテランのプロから、若い方までたくさんの参加があったのは嬉しい限りです。
熱い思いで参加された参加者の中から決勝進出者を決定するのも簡単なことではありませんでしたが、審査員全員で話し合い、およそ半数の方を選出しました。
決勝進出者の方々、おめでとうございます。
来週も頑張ってください。
進出できなかった人の中にも、あと一歩だった方もいらっしゃいます。
個人的にまた見てみたい方もたくさんいらっしゃいます。
きっと1曲だけではわからない本当のその人の実力というのもあるでしょう。
あくまでも今回は今回のパフォーマンスに対する評価です。
また次回を目指して頑張ってください。


以下、それぞれの参加者への私見を記します。
あくまでも私の見方です。

1、青木ルミ子さん ソレア 決勝へ
トップバッターにもかかわらず健闘。衣装もいい。ブラソも力こもっているが、胴体が鎧でも着ているかのようで、硬いのが残念。
2、出水宏輝さん アレグリアス 決勝へ
パソ詰め込みすぎの感ありだが熱演。この人も胴体が鎧。
3、佐渡靖子さん アレグリアス
白いバタ・デ・コーラにマントン。セビージャっぽい。振りにセンティードがあるともっとよくなる。一つ一つの動きに心を込める、というか、最後までちゃんとやりきるといい。
4、知念響さん シギリージャ 決勝へ
バストンで始まる黒い衣装でのシギリージャ。花落とすのはアクシデントではあるのだけど、昔のセビージャのタブラオなら罰金もの。
5、藤川淳美さん ソロンゴ
バタ・デ・コーラにマントンだが、マントンもぐしゃっとなったりで残念。こういう踊りをしたい、という志、目標が見えない。振りをなぞっているという感じ。
6、小野木美奈さん アレグリアス
昔風の振り。構えなど胴体は最初の人たちよりも使えているが、全体的にどたどたしている感じ。
7、松彩果さん アレグリアス 決勝へ
力強いアレグリアス。アレグリアスは戦いではないし、もっと軽やかに踊って欲しい気がするが、回転にキレがあり、表情もいいし、細部もいい。実力十分。
8、谷口祐子さん アレグリアス 決勝へ
バタ・デ・コーラにマントン。マントンを床に投げ捨てるのではなくゆっくり置くなど、細部がいい。ちょっと機械的だけど上手。もう少しゆったりした感じでもいいかも。
9、清水登美さん カーニャ
最初の回転でバランス崩したせいか、調子が出なかった?歌と踊りがバラバラな感じ。
10、市川幸子さん ソレア・ポル・ブレリア 決勝へ
胴体はもちろん、首の位置など、体の使い方がちゃんとしている。欲をいえば、この曲で何を表現したいのか、例えば怒りとか、燃え上がる愛、とか、具体的なものではなく、ぼうっとしたイメージだけでいいので、それがもっと踊り手の中ではっきりするとより伝わってくる、より良くなるのではないかと思う。
11、不在
12、橋田佳奈さん バンベーラ
若い。装いは良いがまだ生徒さんの域を出ない。実力十分。なぜ他の曲ではなくバンベーラなのかを考えるべきというか、やはり何を表現したいかをイメージして欲しい。
13、屋良有子さん ソレア・ポル・ブレリア 決勝へ
体の使い方などテクニックも実力十分。だが、全体的に前かがみになっているのが残念。エバのような、コンテンポラリーぽい動きも入れているが、中途半端な感もある。
14、関真知子さん アレグリアス 決勝へ
アバニコにピンクのチュール生地の、軽そうなバタ・デ・コーラ。きちんとしているが動きにもう少しセンティードが欲しい。一つ一つの動きに思い入れを込める、というか。右から左へ、だけじゃない表現を考えるといいのでは。
15、伊藤千紘さん ソレア・ポル・ブレリア 決勝へ
暗色の衣装で頭の真ん中に赤い花なのは違和感あり。シージョあったら上下のつながりができてよかったかも。もしくは花を下につけるとか。足も出来るから、あとはトロンコ、胴体のコントロールや首なども気をつけるともっと良くなるだろう。
16、ドミンゴさん ソレア・ポル・ブレリア
フラメンコが好き、という気持ちは伝わる。基本をしっかりやれば面白くなるかも。
17、山中純子さん シギリージャ 決勝へ
男装でのシギリージャ。カスタネット、もみあげの髪をくるんとした古風なこしらえ。首の位置と胴体のコントロールなど、課題あり。男装でなくバタで踊ってもよかったかも。
18、宇根由佳さん アレグリアス 決勝へ
7の松さん同様、力で押していくアレグリアス。足が確実で、一つ一つの音がクリアなのがいい。胸をもっと開いてもいいかもしれない。
19、鈴木敬子さん ソレア 決勝へ
ポーズがとてもきれい。歌ともっと絡んでもいいのではないか。足、ちゃんと聞こえない時あったのは残念。
20、佐藤哲平 アレグリアス 
昔ながらのトラへコルトで姿がいい。あやふやさがありところどころ遅れたりもあるが、楽しそうなのがいい。また見てみたい。
21、森山みえさん シギリージャ
赤いバタ・デ・コーラにカスタネット。前かがみな感じ。肩を前に落とさず、胸を開くとずっときれいに見えると思う。カスタネットの音にもニュアンスつけると表現に幅が出るのでは?

というわけで、全体的に、胸を開き、首の位置を気をつけるなど、姿勢にもっと注意するるとより美しく、よりフラメンコに見えるのではないかと思いました。
特に胴体、見逃されがちですが、構えを斜めにしたり、時に反ったり、ねじったり、変化つけると踊りに奥行きが出る、というか、ダイナミックになると思います。顔の位置、首も、難しいですが、気をつけるだけの価値はあります。
また、歌との連携も大切です。歌がよくないと踊りも引きずられてしまう、というか、踊りが良くても歌がイマイチでコンクールでいい順位が出ないというのはスペインでもあることです。反対にいい歌、ギターは踊りを助けてくれると思います。
バタ・デ・コーラやマントン、多くの方が使っておられました。どちらも独自のテクニックが必要です。華やかに見えますが、きちんと扱えないと逆効果です。またマントンもバタもある程度重さがあった方が、技術的に、体力的に大変ですが、美しく見えると思います。
動きにセンティードを持たせる、というのは、A地点からB地点へただ移動させるのではなく、思いを込めるということ。技術的に言えば、速度を変えたり、角度を変えたり、で変化をつけるというのも有効でしょう。
あと、やっぱり、今はたとえできなかったとしても、こういうことがしたいのだ、これが好きなんだ、というイメージは必要なように思います。そして、この曲を通して私は何を伝えたいか、というイメージも。それは言葉にならないイメージでもいいのです。
アレグリアスならカディスの陽光でも、カディスの光る風でも、ペルラ・デ・カディスの笑顔でも、とにかく私はフラメンコが好きなの!でも、何でもいいと思います。
曲それぞれが持つキャラクターを理解して、それを表現しようというのでもいいのです。
ソレアにはソレアの、シギリージャにはシギリージャの、タンゴにはタンゴのキャラクターがあるのです。それを表現するのが一つ、そしてその先、その曲で「私が」表現したいこと、というのも出てくると、観客としてはもっと面白く見ることができます。
ただ振付をなぞるだけではなく、自分は何を伝えたいのか、というイメージを考えることは有効だと思います。
他の人からもらった振付でも、それで何を伝えたいのか、を考えて、どこが焦点なのか、どこに焦点を持っていくかなどを考えるといいのかもしれません。
そして何より大切なのは基礎。コンパスはもちろんのこと、姿勢も大切。サパテアードではリズムだけでなく音にも気をつけ、ニュアンスまで出せれば最高。ブラソ、表情、見せ方。舞台でのいかた。歩き方。細部に気をつけることでパフォーマンスの効果は何倍にもなると思います。


というのは私の見方。参加者の人も、観客としてみていた方も、私と違う見方をされていることと思います。これは違う、ということがあれば是非おっしゃってください。







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