セビージャのマエストランサ劇場でのアルカンヘルのリサイタル、「アベセダリオ・フラメンコ」。
通常のフラメンコのリサイタルとは、全く違うものだった。
オープニングは、シギリージャ、「カンパナス・デル・アルバ」。
カマロン・デ・ラ・イスラ、1984年のアルバム「ビビレ」に収録されたもので、オーケストラ伴奏で歌われた、斬新なもの。当時は反発もあったろう。
続く曲はローレ・イ・マヌエルの「ヌエボ・ディア」1975年発表の曲だ。
そう、これは、現代フラメンコの名曲を歌い継いでいくという試み。
その後も、ホセ・メルセが歌ったアレグリアス「ビボ・シエロ」(アルバム「アイレ」2000年収録)、カマロン「カナステーラ」(1972年)、ミゲル・ポベーダのタンゴ「ブエナ・インテンシオネス」(「ティエラ・デ・カルマ」2006年)とつづく。
どの曲もオリジナルをリスペクトしながらも、彼らしい味わいも付け加えている。
ミゲル・アンヘル・コルテスとダニ・デ・モロン、二人のギター伴奏も素晴らしい。
その二人が、エンリケ・モレンテ「ペケーニョ・ワルツ・ビエネサ」(「オメガ」1996年)やマノロ・サンルーカル「タウロマヒア」の「マエストランサ」なども散りばめて演奏したソロも良かった。
ローレ・イ・マヌエルの「ディメ」(「パサヘ・デル・アグア」1976年)、マイテ・マルティン「SOS」(「ムイ・フラヒル」1994年)、エンリケ・モレンテ「ペケーニョ・レロッホ」(2003年)、ディエゴ・カラスコ「ナナ・デ・コローレス」(「ボス・デ・レフェレンシア」1993年)、カマロンのファンダンゴ・デ・ウエルバ「センタオ・エン・エル・バジェ」(1981年)、ミゲル・ポベーダ「アルフィレレ・デ・コローレス」(2006年)、エンリケ・モレンテのタンゴ「カンシオン・デ・ラ・ロメリア」、「タンゴス・デ・ラ・プラサ」(1992年)そしてホセ・メルセの大ヒット作「アイレ」まで。
フラメンコで、他の人の曲を歌うということはあまりないが、名曲は名曲。
アントニオ・ガデスの振り付けがガデス亡き今も踊られるように、名曲はいろんな人が歌っていい。
アルカンヘルの声との相性もあるのか、エンリケ・モレンテの曲や「カナステーラ」はよかった。でもカンシオン風のフラメンコが多く、フラメンコ好きにはちょっと物足りなく感じられたのではないだろうか。
それでも満員の観客がスタンディングオーベーションで、最後、一緒に、ファンダンゴ・デ・ウエルバを合唱したのは鳥肌ものだった。
リサイタル終盤に、ジャズやロックでもスタンダードナンバーがある。フラメンコでも他の歌い手の曲でも歌ってもいいのではないか、云々、とこのリサイタルの動機を語っていたが、フラメンコのスタンダードナンバーは、メジーソのマラゲーニャだったり、グロリアのファンダンゴだったりするのではないだろうか。
最近の曲を中心にした結果、フラメンコ・フラメンコと言うよりも、フラメンコなカンシオン集になってしまった感がある。ベストヒットフラメンコ、的な。
エンリケの曲だけのアルカンヘルのアルバム、というのはちょっと聞いてみたい気がするけれど、ストレートなフラメンコと、カマロンやエンリケのレパートリーというコンサートの方が私好みではある。
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