2017年11月3日金曜日

日本のフラメンコ アルハムブラ、ソラジャ・クラビホ、ホセリート・フェルナンデス

西日暮里の老舗スペイン料理店&タブラオ、アルハムブラで、来日したばかりのソラジャ・クラビホとホセリート・フェルナンデスを迎えての西日フラメンコ交流とでもいうべきライブ。

1部のトップバッターは田中菜穂子。男装でのファルーカ。男装がよく似合う。
ファルーカというと、男性的な直線的な動きで、ギターがサパテアードと絡んでいく、というのが定番。が、ここではパリージョ、カスタネットを使うのだ。初めて見た。
彼女が師、ロシオ・アルカイデに学んだものだという。
通常は歌は最初に少し入るくらいなのだが、ここでは歌もたっぷり、というのも珍しい。
カスタネットを手につけているので、ファルーカの特徴である直接的な腕の動きが少なくなってしまうのはちょっと残念。また、せっかくカスタネットを使うなら、サパテアードとギターの掛け合いで見せるような、音の競演が見たかったかも。
通常、それを使わない曲目で使うならば、ああ、これだから使うんだ、と納得させることが必要なように思う。それだけ難しいことにトライしたわけで今後が期待。

二人目の野上裕美はアレグリアス。ここで出演者全員が舞台に上がってクアドロ風に。
上がっていたのだろうか。曲の間中、ずーっと怖い顔。真剣さの表れかもしれないが、アレグリアスには似合わない。ニコニコ笑わなくとも、せめて口角上げて、アレグリアスのアイレ、空気を表情でも表現するべきだと思う。踊りは体の動きだけでなく、顔の表情や衣装なども含めて表現するものだ。

1部の最後を締めたのは、お久しぶりなホセリート・フェルナンデス。
フェステーロ風にブレリアを歌い、そこからソレアへ。
サパテアードで押していく、きっちり構成された今風のソレアではなく、マルカールとサパテアードでの、昔風の、アイローサな、雰囲気のあるソレアで、かえって新鮮。とにかくナチュラルなのだ。気負ったところの全くない、普通の、自然なフラメンコ。ああ、こういうのって、日本にはないよなあ。

2部はクアドロ風に全員舞台に座って。
瀬戸口琴葉はシギリージャ。動きはいい。が、シギリージャらしい重みが感じられない。フラメンコのペソは年齢によって得られるところも多いので仕方ないのかな。フレッシュなシギリージャも決して悪くはないのだが、やはり重みが欲しい。振り付けのメリハリ、歌との関係、まだまだ学ぶことは多いだろう。他の曲を見てみたい。

正路あすかはソレア。以前見たものとは全く違う、ドラマチックなもの。といっても芝居仕立てなのではない。表現がドラマチックなのだ。グラナダ風の小さなブラソが彼女らしさになっている。ただ少々長い感じがあるので、あともう少し整理できればもっと良くなるのではないか。

閉幕を飾ったのはソラジャ。バタ・デ・コーラでのアレグリアス。シンプルなバタはセビージャ風の豪華なバタではない。が、元気はつらつなソラジャには似つかわしい、かも。
歌と掛け合いしたり、鉄火肌フラメンコの面目躍如。
慣れない共演者でも、ミュージシャンをリードしてしっかり仕事をしているソラジャはやっぱりすごい。キャリアはダテじゃない。

最後は全員でフィン・デ・フィエスタ。
フラメンコはいいなあ。日本とスペイン、距離が一挙に縮まる。

追記
舞台で、日本人のカンテでスペイン人が踊るのを見たのは今回が初めてだったので感慨ひとしお。私がスペインに行った三十年前は、日本人のライブはギター伴奏のみが定番で、歌が入るのは特別な公演の時くらい、という時代でありました。それが今や、プロではない生徒さんクラスのイベントなどでも歌が入る。すごいなあ。もちろん、スペインのレベルからしたらまだまだです。
今回の歌い手さんも、口跡がいいというのか、レトラが聞き取りやすいな、いろいろなレトラをよく知って歌ってらっしゃるな、すごいな、とは思いましたが、正直、あれ、ここでそのレトラはないんじゃないか、とか思ったり、タイミングにうーん、と思ったりもしました。
ここでそのレトラ、という感覚、これはどこかに決まりが書いてある、とかいうわけではないので、あくまで例えばですが、リズムを上げた後とかにはシリアスすぎるレトラは来ないよなあ、とか、そういう感じのことなのですが。スペイン人の歌い手を見ていてこんな風に思うことはほぼないので、なんか不思議な感じでした。ちなみにこれは彼女にだけでなく、他の日本人の歌い手さんでも感じたことはありますよ。念のため。
ま、踊りが歌を引っ張るわけではあるのですが、歌が始まってしまえば、踊りもそちらに合わせねばならないところもあり、なので、難しいですね。
いい歌があると自然に体が動く、というようなことは実際あると思いますし、ソロとしてのカンテは上手でも舞踊伴唱の経験がない場合、うまくいかないこともあるでしょう。
ソラジャは日本人の歌い手の歌を、引っ張って、自分の踊りの中に入れていきました。すごいなあ。今へレスに住んで、若手の歌い手やギタリストたちも、彼女との共演で学ぶことが多いと感謝されているそうですが、さもありなん。彼女からは踊り以外にも学ぶことがたくさんあるはず。共演の機会がある日本人はラッキーです。

追記の追記
今日、あるアルティスタと話していて気づいたのですが、レトラの選び方が、という批評ということは、それだけレベルが高いアルティスタだから、ということでもあるのですよね。発音、コンパス、音程、レトラの知識、踊りの知識、と一通りのことができているからこそ、歌詞の選び方などで不満が出てくるわけで。
30年前、歌のないフラメンコが普通だったことを思えば、本当、時代は変わりました。
すごいな。頑張れ、日本人カンタオーレス!









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