石井智子スペイン舞踊団はシアター1010で「ラ・ペテネーラ」
2011年に初演した作品というが私は初見。
全てを捨て愛に走った女が、恋人に捨てられ失意の中で死んで行くという悲劇だが、
出会いの場は村の広場で、恋人の新恋人(ややこしいけど)との関係を知るのがセビージャのフェリアという設定で、舞踊団員やこどもたち、役者さんとおぼしき壮年男性らも出演する、はなやかな場面と、ペテネーラとよばれる女の苦悩や哀しみ、失意のソロの対比など、よく考えられた構成だ。これを企画にはじまり、資料収集、取材。オリジナルのストーリーを考え、脚本をかき、振付、演出、主演。すべてを石井がやり遂げた、というのには素直に脱帽。
とくに舞踊団への振付、また衣装や髪型、アクセサリーにいたるまで、細部にこだわってよくできている。美術もシンプルにかつスペインの雰囲気を伝えている。とくにフェリアのカセータはセビージャからそのままもってきたみたいだ。大人数を舞台で動かすのは難しいのだが、動きがきちんと整理されており、またカンパニーのレベルも高い。長年のスタジオでの努力の成果なのだろう。フェリアの場面での伝統的な歌詞でのセビジャーナスではこどもたちも踊っていたのが楽しいし、その後、タンゴでの、金持ちグループと庶民グループのさやあてなども面白い。
またスペイン語の台詞やレトラを、スクリーンに日本語訳とともに映し出すことは、スペイン語がわからない観客にもスペイン語の詩をも楽しんでもらえる、親切でいい趣向だと思う。 はやるかも?
恋人を踊るエル・フンコは髪をオールバックにし、髭をはやし、ちょっと闘牛士ハビエル・コンデ (歌い手エストレージャ・モレンテの夫)のようだ。ソロでカンティーニャス、石井と二人で踊るファルーカ。新恋人を踊る青木愛子と踊るグアヒーラ。出番は少ないが、しっかりとした存在感はさすが。
石井は二部のフェリアの場面でのアレグリアスのかろやかさが、彼女本来の魅力をよくだしていたし、最後の渾身のソレアもよかった。
ギターのフアニ・デ・イスラのメランコリックなメロディも映画音楽のようだ。
ちょっと気になったのはパーカッション。シンバルなど、ならしすぎのような感じ。とくに最後の「レジェンダ・デル・ティエンポ」はギターがきこえないほど。
歌い手たちも一丸となってつくりあげた作品。舞踊団の定番として、これからも公演を続けていくことだろう。
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