2008年のヘレス・フェスティバルの開幕を飾った作品が、
出演者や曲目を多少変えての再登場。
舞台芸術のテクニックをつかって
ヘレスのフラメンコを“みせる”作品。
一列に並んだ椅子に座った面々がちょうどみえるくらいに
幕を低めにあけて
マカニータのナナ。
昔の普段着風の衣装で
時代がさかのぼられる。
その昔、
といってもそんなに遠くない昔、
ヘレスのヒターノたちが働いていたという
農場のイメージ。
朗々と歌い上げるヘスース・メンデスのトリージャは
牛馬につける鈴の音が伴奏。
机に一人むかって
黒い衣装のマカニータがソレアを歌い始め、
やがてカンペーロ
すなわち馬に乗って野原に出るような格好の
アントニオ・エル・ピパが登場し踊る。
歌に敬意を払ってか、
ひたすらマルカール、マルカール。
ポーズ、ポーズ。
踊るというよりは歌を彩った感じ。
下手に
ワイン瓶とコップが並ぶテーブル
そこに座る人々。
ロンドロがミロンガを歌う。
いかにも昔風のアカデミアの先生という、
シンプルでまっすぐな踊り。
タンゴをこれもベテラン、
日本人もずいぶんお世話になったアナ・マリア・ロペスがタンゴを一振り。
ペスかディージャの歌うタンギージョで
ハビエル・ラトーレ!がひと踊り。
ヘレスによくある、こわれかけた古い家を描いた中幕の前で
ヘスース・メンデスのマラゲーニャ。
声量たっぷり歌い上げる。
これまだ古風というかお教室風というか。
ベテランに敬意は払うがこの作品の中で2曲踊るべきだったのだろうか。
マカニータは
パケーラのヒット曲「マルディーゴ・デ・トゥス・オホス・ベルデス」を。
髪型も若き日のパケーラ風。
マカレーナ・ラミレスは黒いバタ・デ・コーラでシギリージャ。
まだ十代というがカスタネットを使ってのソロで健闘。
ジャンパー姿で
スーツケースをさげて登場し
アナウンスが東京行きの便を告げる空港の情景
アレグリアスを踊るアントニオ・エル・ピパ
ロマンセとプレゴン。
幕があくと1966年の闘牛のポスターの前で
繰り広げられるブレリアの宴
ロンドロの歌でマカレーナ、
フアン・パッラ。
ペスカイージャが歌い踊り
アナ・マリア・ロペスがウナ・パタイータ、
ピパはマカニータとヘスースを従えて
一振り踊ったあと
「ビバ!ジョ!」
私万歳。
ヘレスのフラメンコの歴史を、
家、農場から居酒屋、海外へ、
とたどり、
ヘレスのフラメンコのレパートリーをなぞり、
同時に今のヘレスのアルティスタをピックアップする、
という意欲作で2時間の大作。
マカニータとヘスースの熱唱。
舞踊を支えたロンドロもいつもに増して安定感がある。
ギターのマヌエル・パリージャ、マヌエル・バレンシアも
ヘレスらしいトーケをきかせてくれた。
ピパはいつもながらの彼のスタイル。
舞踊が物足りないといえば物足りないが
それがヘレスの現実をそのままうつしているのかもしれない。
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