2010年8月22日日曜日

ロンダのフェスティバル

8月21日土曜日。
セビージャからウトレーラ街道を南に。
ウトレーラ、エル・コロニル、モンテジャノ、プエルトセラノあたりから山となり
夕日に輝く白い町オルベラを横にながめ、ガストール村や洞窟で有名なセテニルへの入り口を通り過ぎ、2時間弱でバスはロンダの町にたどりつく。
天空に浮かぶような町、ロンダ。
セビージャの、45度の熱さが嘘のように涼しい。
今日はこの町のフラメンコ・フェスティバル。

会場は闘牛場などのある新市街から断崖にそそりたつプエンテ・ヌエボを通り過ぎた旧市街。
市役所のそばにある、城壁際の公園のようなスペースだ。
ここに仮設舞台がつくられ、プラスチックの椅子が並べられ即席の野外劇場が出来上がり。

開演は22時。の予定が、お決まり通り遅れて開演。
オープニングはパコ・モンカジョのギターソロ。

先日、ラ・ウニオンのコンクールで優勝した期待の17歳は
ここロンダのコンクールでも優勝していたのだ。
サパテアードとブレリアス。
懐の深さを感じさせる演奏。末恐ろしい。

カンテ部門の優勝者はスーツに身を固めたコルドバ出身エル・ベネノ。

あちこちのコンクールに出場、入賞しペーニャを中心に活躍している、
いるいわばコンクールのプロ。
カンテのコンクールは全国にたくさんあるので、劇場にはほとんど出演しなくても
ペーニャ関係者には有名、というこの手のアルティスタも数多いのである。

続いて、数年前にラ・ウニオンで優勝したルビート・デ・パラ。

そしてロンダ在住、来日したこともあるベテラン、クーロ・ルセーナ。

いつのまにか客席は満杯。立ち見の人もたくさん。
第1部の最後を飾るのはこのロンダのコンクールで優勝した萩原淳子。

深緑のシックな衣装でソレア。

登場の瞬間の集中力。気迫。
きちんとした踊りでロンダの観客を魅了。


休む間もなく赤いバタ・デ・コーラへと着替えアレグリアス。
舞台が小さめのせいだろう、思う存分バタを動かせないもどかしさが残るが、
こちらもきちんと踊り上げ、盛んな拍手をうけていた。

第2部はホセ・メルセ。
モライートの伴奏でオーソドックスなフラメンコを熱唱。
ソレア、シギリージャ、ブレリア、ファンダンゴ…
ラ・ウニオンのときよりもずっとナチュラルでソフトな感じ。

ホセ・メルセのように現代フラメンコを代表する大スターとの
歴史あるフラメンコ・フェスティバルでの競演というのは萩原にとってもうれしいことだったに違いない。
が、出演者が多数に渡るフェスティバルでは、単独公演とちがい
誰が何曲、何分くらい歌うかもわからず、自分の出演時間も
一番手でもない限り、予想がつきにくい。
仮設舞台のコンディションも、劇場とは違う。
今回も、出演まで何時間も待ち続け、
しかも2曲連続で踊る、というハードな状況だった。
それにも関わらず落ち着いてしっかり踊り上げた萩原。

終演後、自分の満足のいくように踊れなかったという感想をもらしていたが、
そのくやしさや残念な気持ちがさらなる向上へとつながることだろう。
たしかにいつものチスパ、スパークはなかったかもしれない。
コルドバで踊ったときのような観客とのコミュニケーションもあまり感じられなかった。
でも、その状況でもきちんと踊ったことは十分に評価できる。
これからはそのきちんとした踊りに何をプラスしていけるか、ではないか。
正確な踊りを一度壊してしまうのもいい。
試行錯誤の中で彼女だけにしか踊れない、自分だけの踊りがみつかる日がくることだろう。

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