2009年9月15日火曜日

スペイン国立バレエ団 30周年記念公演 その1「血の婚礼」

1988年から2003年頃まで2年に1回、そして2007年にも日本公演を行っているので、最近のファンはともかく、日本でもすっかりおなじみのスペイン国立バレエ団。
今年はその創立から30周年ということで、春にはマドリード劇場でエスクエラ・ボレーラの記念公演があったのですが、30周年の最後を飾るのがこのサルスエラ劇場での公演です。王立劇場工事中はマドリードのオペラハウスであったこの劇場は国立の本拠地ともいうべき所。
ここで公演されるのはかつてのバレエ団の名作集でございます。

第一部を飾ったのは「血の婚礼」
アントニオ・ガデス振付けの不朽の名作。スペイン舞踊史にさんぜんと輝く金字塔(言い回しが古いね)。ガデスは1979年、国立バレエ団が創立されたときの監督、つまり初代国立バレエ団監督なのであります。で、当時のレパートリーにこの作品があるのですね。
ついでにいえば、たしか89年の、10周年記念公演でも、ガデスが特別出演し、アイーダ/ゴメスが花嫁役で上演されています。
今回は、プリンシパルのミゲル・アンヘル・コルバチョがレオナルド(ガデスがやった役ですね)、花嫁にアナ・モジャ、とこれは2002年、ホセ・アントニオが監督だったアンダルシア舞踊団でのバージョンでの主役コンビでございます。これに現在、国立バレエ団で監督のアシスタントをつとめるプリミティーボ・ダーサが花婿役で加わるというなかなか強力な布陣。プリミティーボはラファエル・アギラールやアントニオ・ガデス、アイーダ・ゴメスらの舞踊団で活躍してきたベテラン。スペイン国立バレエ団「ロコ」にもゲストで出演(主人公のフラメンコの先生役で)していたのですが、知る人ぞ知る、の実力派ダンサーでございます。

で肝心の舞台でございますが、はい、素晴らしかったです。
名作中の名作だけのことはあります。誰が踊ってもきちんと出来上がるというのが本当の名作。で古典となっていくわけです。

この「血の婚礼」、カルロス・サウラ監督の映画や、今春のガデス舞踊団日本公演などでご覧になった方も多いと思うのですが、たとえば振り付けにでてくるパソ自体はそれほど込み入ったものでも、難しいものではなく、むしろシンプルです。が、その振り付けのひとつひとつの意味をくんで、物語の中の人物となって、踊る。つまり踊るだけでなく、演じることがたいへん重要な意味をもってくるのです。また、群舞にしても、全体の位置関係まで非常に細かく考えられて振りつけられているので、個人個人もそこまで把握しておかなければなりません。
そういう意味で、個人芸としてはじまったフラメンコの進化形ともいうことができるかもしれません。バレエ・フラメンコ、という、ひとつのジャンルとみなすこともできるでしょう。

それにしてもこの作品。完成度が高すぎます。45分ほどの上演時間中、皆、息をひそめて見入ってます。なにかと私語がきこえてきがちなスペインの劇場でも、あの最後のスローモーションでみせる決闘シーンの静寂には、咳ひとつきこえません。
やっぱり、いいものはいい。
国立ならでは、のものとして、いつまでも上演し続けて、後世に伝えていってもらいたいものです。





0 件のコメント:

コメントを投稿