2016年10月30日日曜日

タブラオ・ガルロチ ヘスース・カルモナ

誘ってもらってようやく初ガルロチ。第2部を観る。

いやあ、参りました。
最後を飾ったヘスース・カルモナのアレグリアス。
素晴らしいの一言。上手から舞台へ、わずかな階段を上っていくその瞬間から既に足取りはアレグリアス。軽快、軽妙、明るく、さわやか。
カディスの街のあの明るい陽光やきらめく風が感じられるようだ。
超絶テクニック。サパテアードも回転も素晴らしいの一言!完璧!
形の美しさはもちろんだが、多様さにも脱帽。教科書のような技のデパート。
が、その技術が、フラメンコを表現するための技術であるということが素晴らしい。コンパスの中を自由自在に動き回り、コンパスを呼吸する。細部がいい。レマーテの切れ味。
ただただ オレ!
その昔、アントニオ・カナーレスやハビエル・バロンがスペイン国立時代に、稽古の後、コンパスの中にどうパソを入れるか、どうアクセントつけるか、などという感じで遊んでいた、という話を聞いたことがあるが、そんな感じで、コンパスと遊んでいる、コンパスを楽しんでいる、という感じ。
息をもつかせず、フラメンコの醍醐味を堪能させてくれる。

ルシア・カンピージョのバタ・デ・コーラでのカスタネットでのシギリージャも美しく、女性らしい、伝統的な形と現代的なテクニックが見事に調和されている。コルドバ出身インマクラーダ・アランダのソレア・ポル・ブレリアもいかにもフラメンコ、という感じで悪くない。
これらを支えるビクトル・トマテのギターの素晴らしさ。
歌のロレート・デ・ディエゴは、強く歌う時の声の質感がカルメン・リナーレスのよう。音程もいい。もう一人の歌い手、ジョナタン・レジェスもフラメンコな声を聞かせる。

こんないいグループはスペインのタブラオでもなかなかお目にかかれない。是非是非足を運んで自分の目で確かめてください。

なお、夜遅かったので食事ではなく、タパを二人で二つ頼んだのですが、そのどちらもすっごく美味しかったです。タラのブニュエロ(ほぐしたタラのクリームコロッケ風のもの)とマッシュルームのアヒージョ。マッシュルームはスペインで普通あるものよりもずっと小さいのですが、香りが高い。ワインもグラスで頼めるし。

次回は一部を見に行くつもりです。 ショーだけでなく、食事も楽しみ。









2016年10月28日金曜日

ディエゴ・デ・モロンのリサイタルenモロン

10月29日21時より、ディエゴ・デ・モロンのリサイタルが、モロンのカサ・デ・クルトゥーラで行われる。入場料は12ユーロ。
詳細は市役所のウエブで。

今年はモロンのフラメンコ祭、ガスパチョ50周年ということで年間を通じてフラメンコ関係の催しが行われており、これもその一つ。



2016年10月27日木曜日

GOEMON 新橋演舞場

話題のGOEMON見てきました。面白かったよ〜。

とーってもお金のかかった大衆演劇という、ある意味歌舞伎のルーツ的作品。
伝統的な演目とは違ってセリフも歌詞も全部聞き取れるし、内容はわかりやすすぎるほどわかりやすく、色彩は派手で美しく、演出はもちろん、装置や照明もすごく工夫されていて、飽きさせない。花道だけでなく、宙乗りや客席を駆け抜けたりと観客サービスもたっぷり。芝居の進み方もゆっくりで年配にもわかりやすい。

客席に入ると緞帳は開いていて、野外コンサートの照明を仕込むようなメタリックな柱が並び、真ん中が少し高くなっていて真ん中に階段。下手は少し前に出て階段。電飾のアルファベットでGOEMONの字が赤く光るという、ロックコンサートのような感じの舞台。

この舞台が化けるのだ。メタリックな柱は電飾で十字架が浮かび上がり、バックに金色の幕や格子、桜の模様などが降りてきて、場面を表していく。

話自体は荒唐無稽。石川五右衛門はイエズス会神父と明智光秀の家来の娘の間にできたハーフで、父はフラメンコを踊った、って、すみません、この時代、フラメンコはまだ生まれてないんですけど。。。なわけで、ぜーったいにありえない話。でもいいんです。フィクションなんですから。

歌舞伎の衣装にボータを履いた愛之助さんのサパテアード!にも感心させられたけど、翼くんのファルーカ、男らしくてよかったし、マラゲーニャ歌ったのにもびっくり。歌舞伎役者さんに混ざってお芝居するのは大変だったと思うけど、しっかりこなしてた。プロだなあ。欲をいえば、衣装のせいもあるかとは思うけど、顎をもっと上げ、胸を開いて肩を後ろの方に持って行く方がカッコよさがより際立つかな。

回り舞台、せり、すっぽん、花道といった日本の舞台の仕掛けってやっぱりすごい。これを何百年も前からやっていたって本当すごい。
でメタルの足場みたいなのが楼門になって、有名な「絶景かな、絶景かな」、をやるとか、 洒落ている。
メタルな、スーパーモダンなセットと、純日本的なお衣装がこれまた合うんですよ、意外なことに。

また、個人的にはフラメンコと長唄の掛け合いの最後、ホセ・ガルベスのシギリージャを引き取った歌の方がシギリージャのメロディをなぞるような感じで歌われたのが面白かった。
ホセは歌だけでなく、ギターも弾いて(これがうまいんだよね)、セラットが歌ったをマチャードのサエタ弾き語るところなどマヌエル・モリーナが降臨したかのようだった。

音楽も弦楽あり、邦楽あり、フラメンコあり、で楽しい。
邦楽いいですねえ。去年、小松原舞踊団の公演の時も思ったけど、いやあ、もっと知りたくなりまする。

徳島での初演のビデオが昔新聞社のウエブに上がっていてそれで見たときも、歌舞伎役者さんがフラメンコの型、ポーズが綺麗に決まっていてるので、小島先生に練習期間を聞いたら数日ということでびっくりしたんだけど、やはり普段から鍛錬して、体幹がすごいのと、音楽舞踊のエキスパートだからかなあ。日本舞踊も、扇のいろいろな使い方とか、フラメンコの踊り手が見たらいろいろアイデア盗めるかも。遠く近い日本とスペイン、でございますね。

その昔、先代の猿之助さんが、義経千本桜での宙乗りやスーパー歌舞伎でヤマトタケルとかやって、ケレンだ、なんだと批評を浴びた時代があったけど、そういうものがあってこそ、こんな作品もできたんだろうな。
伝統と革新。
こういうのもフラメンコに通じますね。

今日千秋楽だけど、また再演されたら是非お出かけくださいまし。
楽しいよ。

2016年10月24日月曜日

石井智子スペイン舞踊団公演「ロルカIIIタマリット」

1年ぶりの日本。帰国翌日の北千住。シアター1010で石井智子スペイン舞踊団公演。
ロルカの「タマリット詩集」をモチーフにした作品。

主役は詩。それを舞踊が、音楽が彩っていく。
舞踊団公演と名打つだけあって、石井やゲストのエル・フンコだけでなく、舞踊団員たちもソロや群舞で見せ場を持つが、それもまずはじめに詩ありき、なのである。
俳優さんの語る日本語での詩、スペイン語で語られ歌われる詩。
その詩のまわりに踊りが生まれる、というイメージだ。

音楽はフラメンコのコンパスにこだわらず、もっと自由だ。
アラブ楽器、ウードやカヌーンを取り入れたのもロルカの生まれ故郷グラナダに残るアラブの影響を感じさせ、成功している。アラブ、と言ってもアラブに寄せすぎず、フラメンコな印象を残すような形で、良い感じにフュージョン。

ロルカが幸せな日々を過ごしたグラナダの映像、そして荘園の映像の間から揺り椅子に座ったロルカがぼんやりと姿を見せて始まる。

詩の朗読を踊るオープニングは男装の女性と女性たちの群舞。コルドベスを使った男装がスペインらしく、宝塚の男役的なかっこよさ。欲を言えば男役たちの上半身、もうちょっと緊張感があるとより男らしくなるかもしれない。

続く、石井とコンテンポラリーダンサーのデュオでも、石井はコンテンポラリーに寄せるわけではなく、フラメンコらしいブラソで魅せる。無理をしない。自然。自然に悲劇的な雰囲気を踊る。詩そのままに。

カヌーンがソロンゴを奏で始まるソロは谷口祐子。バレエ系の人なのだろうか、形が綺麗だし、体がよく動く。もっとも形、特に上体、腕の動きの良さはこの人に限ったことではない。群舞の誰もが美しいブラソを見せる。

続くグアヒーラの主役も舞踊団員。桑木麗(芸名?)。周りが微笑んで踊っている中一人だけ無表情というのは、恋ゆえ自分を失った不幸な女性を表そうとしているのだと思うが、例えば眉間にしわを寄せて口を少し開けるといった苦しそうな表情を作るなどの変化があっても良かったように思う。群舞との対比は出ていたので、もう一息、というところか。いや、これも私が欲張りすぎなのかもしれない。あるレベルをクリアするともう一歩上がって欲しいと思うゆえです。気分害したらごめんなさい。

石井のソロ。フラメンコ曲のコンパスに縛られず、自由に、心のままに表現している、という感じ。それでもその動きはフラメンコ。もう彼女自身の表現 になっているのだろう。ひたすらに美しい。

一部の最後を飾ったのはフンコのソレア。この人のことは言うまでもないだろう。ソレアの悲劇性と詩の持つ神秘をうまく表現していたと思う。

休憩を挟んでの第2部はバイオリンのソロを石井がギリシャ風の、布をまとったような衣装で、群舞と共にカスタネットを聞かせて見せる曲は、スペインでいう、ネオクラシコの趣きか。フラメンコのコン パスでなくても、フラメンコのテクニックで見せていくのはさすが。カスタネットもうまいのだが、音の高さというか音色が群舞のそれとあまり変わらないの で、どうせなら少し音が高いものを使うなどすればもっと効果的だったかもしれない、とは思った。これも贅沢ですね。バイオリン、今回はモロッコ風あり、フラメンコありで大変だったと思うが、健闘。でもやっぱりこの場面が一番生き生き弾いていたように思う。

舞踊団員、内城紗良(これも芸名?)
どこか悲劇的な要素のある詩をアレグリアスで、というのは難しいところだとは思うが、熱演。

続いてはムーア風、アラブ風の雰囲気で。舞踊団員の松本美緒のソロも、他の舞踊団員たちも、装い、髪に至るまでうまく雰囲気を作っている。

石井の息子、岩崎蒼生のソロはバンベーラ。いや、1年でこんなにうまくなるものか、と思うほどの上達。子供から少年へ。スポンジのようにどんどんいろんな先生の教えを吸収しているのだろう。上達したらさらに上を目指さなくては。連続回転の時の体の芯、頭の位置がもう少ししっかりすると完璧だ。正面向いて顔を残してのブエルタとか、すごく綺麗なので絶対もっとうまくなるはずだ。将来が楽しみ!

石井のシギリージャ。風格もありしっかり魅せる。ブラソの美しさだけでなく表情に至るまで、全身でシギリージャを、そしてモチーフとなった詩を表現している。体の使い方、腕、顔の位置(実はこれが難しい)。さすがの貫禄。いつのまにか、シギリージャが似合うようになったのだなあ、とちょっと感慨。

再び舞踊団の群舞。男装にペイネータの雄牛。白いジャスミンの花。分かりやすい。舞台いっぱいに広がるロルカの世界。

最後は石井とフンコのパレハでのカンティーニャ。カマロンが歌った、カシーダ・デ・ラス・パロマ・オスクーラス。複雑なパソをきちんとこなしている。

エピローグではこれまでの場面、それぞれの衣装で登場しポーズ。詩が詩集になる、ということでもあるのだろう。華やかで美しい。宝塚みたい、と思ったら、プログラムに、ステージアドバイザーとして元タカラジェンヌが。なるほど。
ちなみに私は昔宝塚ファンでございました。もう30年見ていないけど。

作品として、よくまとまっていて見事だったと思う。詩を日本語で朗読するだけでなく、スクリーンに映し出すのもいいし、スクリーンに映し出される、マントンの模様やアルハンブラの?タイルの模様なども雰囲気作りに一役かっている。詩集の装丁になるのかな。

惜しむべくは照明。踊り手よりもミュージシャンの方が明るいときがあったり、ソロの踊りなのに顔に影があったり、スモークのたきすぎで、フンコのソレアの最初がよく見えなかったのも、照明が見切れていたのも残念(照明の光が目に入って見にくのですよ、私が年寄りだからかもだけど、手を目の上にかざしてみていました) 劇場の構造で仕方ないのかな? 

 終演後楽屋に挨拶に伺うと石井があしをひきずっている。一部の最後に腱を痛めたとのこと。がそれを微塵も感じさせなかったプロ根性に脱帽である。早くよくなりますように







2016年10月20日木曜日

マヌエル・ヘレーナに捧げる

ベテラン、カンタオール、マヌエル・ヘレーナに捧げるコンサートが、11月17日セビージャで開催される。

セビージャのプラブラ・デ・カサージャ生まれた。自ら詩をかきそれを歌う彼はフラメンコのシンガーソングライター。フランコ独裁時代に反体制の歌詞を歌い、牢屋にいれられたことも。

その彼を描いたドキュメンタリーがセビージャのヨーロッパ映画祭で上映され、それをも記念した催しとして制作のカナルスールがオーガナイズしているとのこと。






◆マヌエル・ヘレーナに捧げる
11/17(木)21時30分
[出]〈c〉ミゲル・ポベーダ、アルカンヘル、エスペランサ・フェルナンデス、エル・ペレ、ミゲル・オルテガ、〈g〉リカルド・ミーニョ、〈piano〉ペドロ・リカルド・ミーニョ、〈歌手〉ビクトル・マヌエル
[場]セビージャ FIBES
[料]21〜61ユーロ
[問]www.fibestickets.es

2016年10月19日水曜日

キンテーロ劇場のフラメンコ

ビエナルが終わってもフラメンコ公演はあります。セビージャだもの。
フエベス・フラメンコスは劇場改装中なのでまだはじまっていませんが、
その昔、パコ・デ・ルシアのマネージャーだったこともあり、ラジオのパーソナリティーやテレビでインタビュー番組をもっていたこともあるヘスース・キンテーロがオーナーの小劇場。セビージャに数少ない、私立の劇場で中心地区にある。



 10/23(日)12時30分
[出]〈b〉マリア・アンヘレス・マルティネス、フアン・ホセ・ビジャール、トロンボ、マヌエラ・リオスほか
[料]10ユーロ
10/27(木)21時30分「ジョ・メ・ロ・ギソ、ジョ・メ・ロ・コモ」
[出]〈b〉カルメン・メサほか
[料]15ユーロ
10/28(金)21時30分「ティエンポ」
[出]〈b〉マリア・デル・マル・ベルランガ
[料]15ユーロ
[場]セビージャ キンテーロ劇場
[問]https://www.giglon.com

2016年10月18日火曜日

ヘスース・ゲレーロ バルセロナ公演

ミゲル・ポベーダらへの伴奏で知られるカディス出身のギタリスト、ヘスース・ゲレーロ。
新譜を発表したばかりの彼、その新譜発表記念のリサイタルが、バルセロナの世界遺産、カタルーニャ音楽堂で開催される。

◆カタルーニャ音楽堂のフラメンコ公演
10/22(土)21時
[出]〈g〉ヘスース・ゲレーロ、ゲスト〈c〉ミゲル・ポベーダ、〈perc〉パコ・ベガ、〈c〉エル・ロンドロ、〈b〉アベル・アラナ
[場]バルセロナ カタルーニャ音楽堂
[料]39〜45ユーロ
[問]http://www.palaumusica.cat

なお翌日はホセ・デ・ラ・ベガのスタジオでマスタークラスを開講。
こちらも注目。

2016年10月17日月曜日

ヒラルディージョ2016

今年のビエナルのヒラルディージョ、受賞者は以下の通り決定した。

カンテ;マリナ・エレディア
バイレ;ロシオ・モリーナ
トーケ;ビセンテ・アミーゴ
最優秀作品;「カテドラル」パトリシア・ゲレーロ
革新賞;「ディアロゴス・デ・ビエホス・イ・ヌエボス・ソネス」ファミ・アルカイ、ロシオ・マルケス
新人賞;マリア・テレモート
セビージャ市賞;「バイランド・ウナ・ビダ」
審査員賞;アンダルシア舞踊団群舞
魔法の瞬間賞;ホセ・バレンシア

うーむ。ロシオ・モリーナとビセンテ・アミーゴ、バイランド・ウナ・ビダ、アンダルシア舞踊団には拍手。でもほかは。。。な感じですが、みなさんはどうですか?

2016年10月10日月曜日

コルドバのコンクール

11月1日から26日まで開催されるコルドバのコンクール。その申し込み受け付けの締め切りが10月24日に延長された。

今年で第21回を迎えるコルドバのコンクールは3年に1回の開催だが、今年は60周年ということで、過去の受賞者も特別に出場可能とのこと。

申し込みなど詳細はwww.nacionaldearteflamenco.esまで。

以前は細かく曲種ごとに賞がわかれていたこのコンクール、前々回に大幅にシステムがかわり、現在は、カンテ、バイレ、トーケ、各部門一人のみ優勝。
カンテ、バイレは4つのジャンルから1曲ずつ4曲で、ギターはソロと舞踊伴奏、歌伴奏の3ジャンルをやって、での審査。とはいっても予選ではカンテは3曲、踊りは2曲、ギターはソロ2曲と歌伴奏1曲。

以前は一曲だけでもできれば予選にのぞむこともできたのだが、今はそういうわけにはいかない。。。

去年の決勝進出者も、
カンテ/マヌエル・カストゥロ、ペドロ・エル・グラナイーノ、エバ・デ・ディオス、タマラ・アギレラ
バイレ/メルセデス・デ・コルドバ、ヘスース・カルモナ、アナ・カリ、エミリオ・ラミレス
ギター/ニーニョ・セベ、サンティアゴ・ララ、ハビエル・コンデ
とプロがずらっと並ぶ。ちなみに最初の名前が優勝、2番目が準優勝(ギターは二人とも同率2位)
予選には日本人もいたし、前々回には決勝にアメリカ出身のラ・チミも残ったのでありますが。。。

なお、予選は無料でみることができるはず。この時期にコルドバにいくならのぞいてみてもいいかも。

2016年10月8日土曜日

ビエナル総括/記者会見

10月7日ビエナル総括記者会見が行われた。

25日間に渡り、69作品83公演が行われ、うち67作品が満員札止めの公演があったという。マエストランサ、ロペ・デ・ベガ、セントラル、アラメーダの各劇場、オテル・トリアーナ、アルカサル、エスパシオ・サンタ・クラーラ、そしてサン・ルイス・デ・ロス・フランセセス教会と8つの会場に述べ43000人が足を運び、そのほか、町中でのパフォーマンスやイベントなどを含め、およそ12万人を動員したそうだ。
なお、アンケートによると観客の66%が国外からの人で、フランス、アメリカに次いで日本からの人も多かったとのこと。
地元スペインをはじめ、22カ国から291人の記者/写真家なども訪れるなど、主催者側はその成果に満足の様子。

なお、次のビエナルにむけていろいろな計画をねっているようだが、昨年行われた、セプティンエブレ・フラメンコは、来年は行われない。ただ、365日ビエナルということで、1年のうちにいくつかの企画で、ビエナルをアピールしていくことになる予定。来年9月には再来年のビエナルで上演される作品のリハーサルなどが公開されるかもしれないとのことだ。

2016年10月5日水曜日

個人的ビエナル総括

2016年のビエナルも無事終了。
いや無事ではないか。
間際での初日演目変更、スペイン国立バレエ団公演中止、それを補うためにプログラムに加わったマノロ・サンルーカル公演の中止。
でもま、とにかく終わってよかった。

私が見ることができたのは25公演。全部の半分にもみたない。基本的に20時半開始の公演を中心にみてきた。1日に3公演ある日もあるが、体力的にも気力的にもそんなにみることはできない。ヘレスですでにみていた作品はパスし、オテル・トリアーナでの3公演のほかは、セントラル3回、サンタ・クラーラ、サン・ルイス・デ・ロス・フランセセスそれぞれ1回ずつのみ。いや見たい公演はもっとあったんだけどね。なので、以前のような、総評とはなりえないのだけれど。

舞踊
舞踊で一番よかったのはやっぱりイスラエルかなあ。彼は別格。あの呼吸、あの動き。なんといっても唯一無比でございます。
そのほかは、まず、みっつのファルーカ。
初日「女の戦争」でのクリスティアン・ロサーノ、マリアーノ・ベルナル、エドゥアルド・ゲレーロ、ホセ・マヌエル・ベニテス、4人のダンサーによるファルーカ。
アンダルシア舞踊団公演でダビ・コリアがソロでみせたファルーカ。
ハビエル・バロン、ラファエル・カンパージョ、アルベルト・セジェス3人でのファルーカ。
いずれも基本をおさえつつ、現代風にアップデートしてあり、見事なファルーカでございました。
そして作品としては、二日目のマノロ・マリン、ホセ・ガルバン、ミラグロス・メンヒバル、アナ・マリア・ブエノ、4人のマエストロによる「バイランド・ウナ・ビダ」かなあ。
メルチェが出なかったのは残念だったけど、ルベン・オルモの演出もあって、作品としては結局一番よかったように思う。
ほかにも、カレーテやファルキート(ブレリア!)、そしてすごすぎるロシオ・モリーナ(ゲストのチャナのすごさ!彼女の公演は歴史に残るといわれてまする)。舞踊的にはじゅうぶん満足いくビエナルだったかと、こうして書いていくと思えてきました。
一番の問題作?「ジュジュ」主演のイサベル・バジョンもいろいろいわれているけれど、私的にはすごい、と思いましたけどね。。。ま、いろいろいう人はいるけれど。

ギター
ビセンテ・アミーゴがとにかくバランスよく、見事なリサイタルをきかせてくれたけど、トマティートのリサイタルの前半もよかったし、豪華ゲストに負けないトーケをきかせたダニ・デ・モロンとなかなか充実しとりました。ただ個人的にはビセンテもトマテもダニも、PAのボリュームが大きすぎて耳が痛くなる。ロックじゃないんだから、もっとデテールがきちんときこえるような音を希望。スペイン人は耳遠い説が復活しそうでございます。

カンテ
なんといってもヘスース・メンデスのシギリージャ!いやあひさびさにカンテでぞくぞくした。ほかの曲はまだこなれていない感じのものも多かったけど、これからも楽しみ。が、そのほかはこれというのがなかったかなあ。
行けなかったマリア・テレモートとペドロ・エル・グラナイーノ&ランカピーノ・チーコの公演がよかったらしく残念。 


なんて感じでしょうか。。。日本から沢山いらっしゃっていた方々、おつかれさまでした。きっとそれぞれに好みの公演があったことだと思います。
ま、フラメンコは趣味のもんなので、それぞれに趣味が違い、どれが好きとか嫌いとか、人それぞれ。
でも、これはフラメンコじゃない、とか安易にいうのはおすすめしません。
私の好きなフラメンコじゃない、っていうならいいんだけど。

狭義でのフラメンコは、みんなもしっている、規則のある曲種によって構成されている音楽と舞踊だけど、フラメンコのアルティスタが取り上げる伝統的なフラメンコじゃない演目も、フラメンコ的な技術や表現をつかっていれば、広義でのフラメンコなんではないかなあ、と私は思う。
フラメンコのアルティスタがいろんなことに挑戦して、時には失敗しても、結果的にはそれがフラメンコをより豊かなものにして行くのではないか、と思うのであります。

ま、なんだかんだいっても、見た後に、あれがよかった、悪かったと友達としゃべりながら飲むのが一番楽しいかもであります。

2016年10月3日月曜日

ホセ・メルセ「アントロヒア」

初日同様満員のマエストランサ劇場で2016年ビエナル最後の公演はホセ・メルセ

舞台下手に登場し、デブラ、マルティネーテ、トナとうたいつぐ。
Archivo Fotográfico La Bienal de Flamenco. Fotógrafo Óscar Romero.
  一度引っ込み、今度は舞台中央へ。トマティートの伴奏で、タランタ、タラントといいながら、歌ったのはカルタへネーラふたつとタランタト。ん?
タランタといいながらカルタへネーラをとまぜて歌うことはまだよくあることだけど、タランタとタラントと先にいっておきながら、カルタへネーラというのはありえないのでは?
続いてブレリア・ポル・ソレア。なんか伴奏といきがあっていないように思って不完全燃焼。

Archivo Fotográfico La Bienal de Flamenco. Fotógrafo Óscar Romero.

ペペ・アビチュエラの深くフラメンコな音の伴奏でマラゲーニャとグラナイーナ。
歌い慣れたマラゲーニャはいいのだが、グラナイーナがうーん、ちょっと変。
ソレアもなんかいつもの調子が出ない感じ。シギリージャで少し取り戻したか。

Archivo Fotográfico La Bienal de Flamenco. Fotógrafo Óscar Romero.
 アルフレド・ラゴスの伴奏で、ファンダンゴ・デ・グロリアふたつとファンダンゴ・デ・マヌエル・トーレ。とくにグロリアがよかった。
そしてティエント/タンゴ。

トマティートが再び登場しアレグリアスを伴奏。
最後は全員の伴奏でブレリア。
Archivo Fotográfico La Bienal de Flamenco. Fotógrafo Óscar Romero.
最後は立って歌い、ちょっと踊ってみせる。
Archivo Fotográfico La Bienal de Flamenco. Fotógrafo Óscar Romero.

アントロヒア、とタイトルをつけるだけのものだったかどうかは疑問だが
一曲一曲が短く、あっという間のコンサートだった。

こうして2016年ののビエナルもおしまい。おつかれさまでした。

2016年10月2日日曜日

ロシオ・モリーナ「ウナ・インプロビサシオン・デ…」

テアトロ・セントラルでのロシオ・モリーナ公演。

劇場の入り口で使用説明書を渡される。
ワッツアップというラインのようなアプリでメッセージを開演前に送ってください、とか、必要なら眠っても、食事をしてもかまいません、インプロビゼーションの流れをこわさないようにすればいつでも出入り自由です、とか、通常の公演では考えられないような事項がならぶ。

通常の劇場公演とはちがい、通常舞台があるところの上手側と舞台奥にも客席を設置。三方から客席に舞台は囲まれている。舞台奥にはミュージシャンの席。
舞台手前の下手には衣装がちらばり靴がならべられてある。上手には鍋などもろもろ。
舞台の上には残り時間を示す時計。4時間にわたる公演の開始である。

Archivo Fotográfico La Bienal de Flamenco. Fotógrafo Óscar Romero.

最初は、アントニオ・カンポスとホセ・アンヘル・カルモナの歌う、プレゴンなど無伴奏のフラメンコ曲で踊っていく。これって、2007年、アンテケーラでやった公演でもやったよね、と思い出す。もちろんアップデートされていて、より鋭く、より集中した感じ。うなるしかない。

その後、私は使用説明書通り、 出たり、入ったりしながらの鑑賞だったのだけれど、
ローレや

Archivo Fotográfico La Bienal de Flamenco. Fotógrafo Óscar Romero.
ラ・チャナ、バレリアーノ・パーニョス、アンダルシア舞踊団監督就任が決まったラファエル・エステベスら、

Archivo Fotográfico La Bienal de Flamenco. Fotógrafo Óscar Romero.
豪華なゲストと踊り続けた。

カタルーニャのバイラオーラ、ラ・チャナはかつて日本で公演したこともある、足の強いバイラオーラだが、今は身体をこわし、椅子に座っての踊りとなったのだが、感動的だった。歌い手とからみ、チャナの前の椅子に座ったロシオと踊る。どきどきするような瞬間だった。

 その体力、気力、発想力にはただただ脱帽である。

Archivo Fotográfico La Bienal de Flamenco. Fotógrafo Óscar Romero.

Archivo Fotográfico La Bienal de Flamenco. Fotógrafo Óscar Romero.


マリナ・エレディア「コントラ・クエルダス」

グラナダの歌い手、マリナ・エレディアはロペ・デ・ベガ劇場で。
「コントラ・クエルダス」ということは弦と戦うのか?
5人のギタリストを招いての公演。

幕が上がる前からブレリアの太い音が響く。
パコ・デル・ガストールだ。
昔ながらのフラメンコの音。その音にききほれる。
ソレア。昔ながらの歌詞を歌う。がその声とギターがからみあうことはない。

Archivo Fotográfico La Bienal de Flamenco. Fotógrafo Óscar Romero.
 ダニ・デ・モロンでアレグリアス。のびのびとした、今を感じさせる音。
そしてクプレ。シエリト・リンドやバンビーノのヒット曲「ボイ・ア・ペルデール・カベサ・ポル・トゥ・アモール」など。

3人目のギタリストはマノロ・フランコ。 風格がでてきた彼のギターは歌をもりたてる名伴奏なのだが、 彼女はきいていないようにみえる。タラント、ティエント。

マヌエル・バレンシアはシギリージャ。ソロかと思うほど長いイントロでお色直しをおえてマリナが登場し歌う。続いてバンベーラ。うーん、バンベーラにきこえない。

Archivo Fotográfico La Bienal de Flamenco. Fotógrafo Óscar Romero.
ここで客席に座っていたドランテスがよびだされ、レブリハーノへのオマージュということで、ドランテスのギター伴奏で、ガレーラを歌う。ドランテス、ギターもふつうにうまかったです。

Archivo Fotográfico La Bienal de Flamenco. Fotógrafo Óscar Romero.   
最後は彼女のいつものギタリスト、ボラの伴奏で、マラゲーニャとタンゴ。
うーん、マラゲーニャもマラゲーニャにきこえないし、伴奏も音を少なくしてるのはいいが、なんかあっていないきが。うーむ。

Archivo Fotográfico La Bienal de Flamenco. Fotógrafo Óscar Romero.
最後は全員が舞台に上がった。

 複数のギタリストと共演することで変化をつけるのはいい。でも彼女自身は誰がきてもかわらない。どの曲を歌っても、なぞっているようにしかきこえない。こちらになにも伝わってこない。ほぼ2時間のリサイタルは長い。

なお、ろうそくやカンテラをたくさん飾った舞台。マリナの横にはグラナダ名物寄木細工のテーブル。椅子には豪華な刺繍のマントン。バックには裸電球と4つの額縁、と、雰囲気をつくろうとしたようだ。でもホリゾントに木やタイルの柄のような模様をうつしだすので、額縁はじゃまでは?



2016年10月1日土曜日

パトリシア・ゲレーロ「カテドラル」

パトリシア・ゲレーロの新作「カテドラル」はロペ・デ・ベガ劇場で。

Archivo Fotográfico La Bienal de Flamenco. Fotógrafo Óscar Romero.
幕があくと暗い舞台に、黒装束にペイネータとマンティージャをつけたパトリシアが座っている。鐘の音のようなパーカッションで、カウンターテナーとテナーによる聖歌(?)で踊るパトリシア。

Archivo Fotográfico La Bienal de Flamenco. Fotógrafo Óscar Romero.

中世風の衣装をつけた3人の女性がいきかう。

Archivo Fotográfico La Bienal de Flamenco. Fotógrafo Óscar Romero.

ホセ・アニージョが歌うブレリア・ロマンセアーダ、ロマンセ。パトリシアと元国立バレエのモニカ・イグレシアスのデュオ。3人の踊り。シギリージャ。黒い衣装の前をはだけ、ベージュのスリップというかネグリジェというか、の衣装になった女性3人のタンゴ…。カウンターテナーとテナーの歌や台詞で踊る。最後は黒い服を脱ぎ捨て赤い衣装で。

Archivo Fotográfico La Bienal de Flamenco. Fotógrafo Óscar Romero.


雰囲気はロルカの作品「ベルナルダ・アルバの家」そのもの。黒い衣装で抑圧されている女たちの内なる叫び。欲望。自由への希求。
実際プログラムでも、自由についての考え、だとか、女性の自由について、などとかかれているので、伝えたいことは伝わったといえるのだろう。

パトリシアは若手の筆頭ともいうべき踊り手で、その技術のすばらしさはこの作品からでもわかるし、群舞の3人の女性も技術はしっかりしている。パトリシアの振り付けは、エバ・ジェルバブエナやルベン・オルモの影響もあるのだろうか、ちょっとコンテンポラリー風。セビージャの演劇界ではちょっと知られた演出家がついていることもあり、最初から最後まで作品としてのはたんはない。緊張感を継続して作品は進む。テナーたちのおごそかさ。スルバランの絵から抜け出たような衣装。雰囲気づくりは成功しているのだろう。



だが、パトリシアの魅力を最大限にいかす作品ではない。
抑圧から解放されて、次作では自由にはばたく彼女がみたい。